セミ その一生

朝、ベランダの窓を開けると雨模様です。
デッキのサンダルに羽化して間もないセミと抜け殻を見つけました。
住まい地域でも今日は大雨洪水雷雨の注意報・警報が予想されています。線状降水帯の影響も各地でニュースになっています。

セミに対しては、自然のままで、人間の手はかけないほうがストレスにならないだろうと思いつつも、羽化したセミの雨しのぎをしたいと考えました。
敷地の木には、スズメ、ハト、ヒヨドリ、ムクドリ、カラスなどが頻繁に飛び交っていて危険です。木の幹も雨が激しく滑りそうです。
8時過ぎに雨が激しく、時折風も強くなりました。取り急ぎセミがつかまっているサンダルごと鉢植えの葉陰に置いて、傘を立てかけました。
家に入れようか迷ったところですが、セミの寿命にかかわることなので、とりあえず見守ることにしました。

1日中、雨が降ったり止んだりです。セミもほとんど動かず心配になりましたが、羽の色が少しづつ茶色がかってツヤも出た印象です。
セミは樹液が主な餌ですが、砂糖水や昆虫ゼリー、果物の果汁なども代用できるので、家にある代用品を脱脂綿や布に浸してそばにそっと置いてみました。

観葉植物アイビーの葉陰にじっと隠れていたセミですが、暗くなってからそっと覗いてみると、顔だけちょこんと出していました。セミの正面に人けを感じるとストレスになると思いカメラを向けませんでしたが、何だか挨拶をしているような印象を受けて可愛くなりました。

夜が明けて8月11日の朝も、雨が降ったりやんだりしていましたが、セミはまだ植物の葉陰にいるようです。
日が昇った時間帯に、セミが少しづつ移動したり羽ばたきをする様子が見えました。
体全体の色も変化してつやがあり、触れてはいませんが硬くなっているような印象を受けました。
小降りになると、セミは植物や傘下から離れていき、一瞬雨が止むと羽を時々広げています。それと同時に、木の上ではハトやヒヨドリが鳴いています。

羽を一瞬休め、なぜか、もう片方のサンダル(昨日羽化した時の抜け殻がついている)にセミは移動し始めました。
そして間もなく、南側の空に羽ばたいていきました。
「飛んでった、やった!」と思った数秒後のこと、ヒヨドリがセミを空中で捕獲して上空に……。

思わず「やだーなんでー!」と声を上げてしまいました。羽化して次の日に寿命が尽きてしまいました。
自然のままにしてあげていたら、もっと生きられたのか、遠くから観察して触れてはいないが、セミのストレスになったのではないか、など色々考えました。
摂理とはいえ、目の前で捕獲されて力尽きるセミをみて、ショックでした。
セミが自らの命を与え、ヒヨドリの餌となって命を紡いでいると切り替えるしかありません。